細胞診検査(細胞診断)
最終更新日:2011.7.11
細胞診検査(細胞診断)とは
人の体から採取した細胞の形態を顕微鏡で見て病変の有無を判断する検査です。患者に苦痛を与えない自然剥離細胞を対象としてはじめられたもので、利点としては患者への負担が少ない点、組織診等よりも検体採取が容易である点、繰り返し検査をし易い点があります。
標本の作製や染色等の技術的なプロセス、また標本を見て細胞を鑑別したり、がん細胞等を探し出すのを「細胞検査士」、その探し出した細胞に適切な診断を下すのを「細胞診専門医」という資格を持つ者が行っています。
[材料]Specimens | |
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主には婦人科検診で代表される子宮頸部の擦過細胞診で、そのほかに尿、喀痰、乳汁等の分泌物、乳腺や甲状腺の穿刺液、腹水、胸水など、さまざまな分野で採取された細胞が対象となっています。 |
[処理]Sampling | |
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処理工程 |
顕微鏡で観察するため、細胞を直接スライドガラスに塗沫します。材料を直接綿棒などで採取した場合は、その綿棒をスライドガラスに塗ればいいのですが、尿などの液状のものは、比重差を利用した遠心法やフィルター濾過法などで細胞成分を集め、集めた細胞のみをスライドガラスに塗ります。また、血液や培養細胞等から特定の細胞を集めることもあります。 |
[固定]Fixation | |
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組織検査と同様、細胞診検査においても、できるだけ体の中にあった時の状態と近い形で保存するために「固定」という操作を行います。ただし、一般に、組織検査では材料を固定してから標本を作製するのに対して、細胞診検査では先に標本を作成してから固定する点が異なります。固定法としては、細胞内の水分を高濃度のアルコール(95%エタノール)で置きかえることで、細胞の蛋白質を凝固させて形を保存するのが基本とされており、これを「湿固定」といいます。細胞が水分を失わない(湿っている)うちに固定するからで、スライドガラスへの細胞塗沫から固定までの間、乾燥は絶対厳禁とされています。(細胞塗沫から固定までの間は3秒ほどです)ただし目的や染色法によっては湿固定ではなく、迅速に乾燥させたもの(乾燥固定)を用いる場合もあります。(Giemsa染色等) |
[染色]Staining | |
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染色工程 |
細胞は、そのままでは殆ど色がありませんので、通常の光学顕微鏡で観察できるよう、細胞に色をつける作業(染色)を行います。染色には目的によって多くの種類がありますが、細胞診ではPapanicolaou(パパニコロウ)染色が基本となっています。その他、目的に応じて各種の特殊染色や免疫組織化学反応を行います。染色後は封入剤を用いてカバーガラスで覆い固化させて標本が完成します。 |
<基本的な染色法> | |
細胞像 |
細胞塗抹標本を用いる細胞診の場合には、Papanicolaou(パパニコロウ)染色が基本的な染色法として広く用いられています。この染色は複数の色素を用いた多重染色法で、核はヘマトキシリンで染めますが、細胞質は4種類の色素が関わり細胞の状態の微妙な差を反映した多彩な染色性を示します。ただし、この染色は微妙な染色だけに標本を乾燥させてしまうと染色結果が本来の染色性から大きく変化してしまうという難しさがあります。 同じ細胞塗抹標本でも、血液細胞や非上皮性細胞の場合にはGiemsa(ギムザ)染色がよく行われています。この染色も複数の色素が使われており、特にpHによって染色性が微妙に変化します。注意すべきは、この染色ではパパニコロウ染色とは逆に標本はむしろ迅速に乾燥させなければ綺麗に染まりません。染色によってそれぞれ適した固定法や処理法がありますので、注意が必要です。 |
[鏡検]Observation | |
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鏡検 |
上記の方法で作製された染色標本を、顕微鏡で観察・検査することを一般に「鏡検」と言います。細胞検査士は細胞の種類の鑑別・同定や、"がん細胞"などの異常な細胞(異型性を示す細胞=異型細胞)の有無を検査します。細胞検査士が"がん細胞、またはがんの可能性のある細胞"と判断した細胞は細胞診専門医によって病名診断が行われます。 細胞検査士と細胞診専門医の二人三脚で、日々、細胞診業務を行っています。 |